びいまあ嫌い

BMWが大嫌いだった。日本のメーカーに押されて「自主100馬力規制」なんて宣揚した挙句、さっさとそれをひっこめるメーカーの態度も、乗ってる奴らも大嫌いだった。

 

佐渡にて


「若いのなんて、いざとなったら、足だしてコーナー曲がって抜いちゃうからね」ってなことをのたまわっていたのは、二昔前に行きつけだった、呑み屋のオヤジ。

このおっさん「Rなんたら」とかいうバンクしたらヘッドこすっちゃいそうな、BMの愛車が自慢。若い頃はモトクロスで「鳴らした」という。


時々、碓井峠を走りにいくらしく、当時そこにタムロっていたローリング族には負けないぞ!ってことが言いたいらしい。


「脚だしたから、なんだっての?、ジジイのくせにいきがるなよ」

以後、ケンケンガクガク・・・。

このジジイだけじゃなく、どーもベンベに乗ってるおっさんは変にツっぱってたり、スノッブだったたりで好きになれない。

 

K1200R

 

一昔前には「キリン」なんていう、オヤジの妄想と意固地を凝縮したマンガが流行して、BMWは「アガリのバイク」なんていう好意的な見られ方をした。

「あっちがわ」「こっちがわ」「ロングライダー」「・・・・」、長くオートバイに乗っているものとして、その気持ちは良くわかるのだが、そんなに肩にチカラを入れて、シャチホコばったら、曲がれるコーナーだって曲がれなくなる。このマンガもBM嫌いに拍車をかけた一因。

四輪のベンベにしても、乗ってる奴らのガラが悪い。たいして速くもないし、高級車でもないのに、前の車にアオリをいれたり、駐車枠をはみ出して車を停めたり、決死で追い越し車線を空けなかったり、なんともお行儀がわるい。

僕の中では「びいまあ即ちヤア様もしくは奔放な自営業種様」という図式が成立していて、お近づきにはなりたくない。

この「タチの悪いのが乗ってる」という点は、どこの国でも同じ。オートルート・モーターウエイ・アウトストラーダ・アウトバーン、オーストラリア、中国、中東、どこに行っても、道という道、ベンベ様のものである。

 

K1200R

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

K1200S

 

BMWは大嫌いだけど・・・・

僕って結構ミーハーなので、ニュルをかっとんでるK1200Sを見たら、欲しくなった。ドイツでK1200Rをレンタルして乗ってみたら、なんとも快適かつ、速かった。アウトバーンを200km/h以上のペースで流して、一日1000km以上走っても、とっても楽チン。「BMWは疲れないバイク」っていうのはでっかいフェアリング付きのRシリーズに限ったことじゃなく、Kにおいても同様だった。

 

 

佐渡にて

 

欲しかったゾンネン・ゲルプで、走行4000km、2年落ちの出物があったので購入した。買った後、一年の間に、九州、東北、佐渡とツーリングしてかれこれ10000kmは走った。高速道路を長距離走るツーリングには、ほとんどK1200Sででかけた。そうしたシチュエーションでは他のバイクに目が向かぬほど、速くて、疲れなかった。岡山から、中国・名神・中央・圏央・関越と高速を辿って、GWの渋滞を掻き分けながら、丸一日走りきっても、まだまだ走り続ける余力が残っていた。

 

K1200S

 

メーターは完全にスケールを振り切るし、タイトなコーナーでも車格をもてあますことはない。塗装の質は日本製やイタリア製のオートバイとは比較にならないほど上質である。ホイールやエンジンのカバー類に始まり、ブレーキレバー一本に至る細部まで、入念に設計され、芸術品的に造形されている。国産スーパースポーツがいかに性能的に優れていても、もうこれは全く、格が違う。

 

K1200S

 

いただけない点はと言えば・・・、まず何よりもABS。ブレーキのサーボアシストは比較的ダイレクトで好感がもてるが、ABSだけはキャンセルできるようにして欲しかった。いわゆるインテグラルブレーキシステムが採られていて、Fブレーキレバーのみで前後輪ともに制動するのだが、ハードなブレーキでは容易にリアがホッピングしてしまう。この際、後輪のロックを察知してABSが作動する時に、フロントブレーキの油圧までを逃がしてしまい、結果として制動距離が延びる。コーナーの進入でABSが作動すると、結構コワい思いをする。K1200SのABSはB社(日本のK社もこのB社のABSを採用している)が開発しているのだが、K1200S(サーボ付)の時点においては、オートバイをスポーティに走らせるには、まだまだ荷が重い。現状、オートバイ用のABSに関してはH社の自社開発のものが一番優れているらしい。

 

シャフトドライブのクセも比較的強くでる。左コーナーで深く曲がり込むには車体が置きあがらないように、スロットルを開くのを一瞬待つ必要がある。高速からの急なアクセルオフでも、車体が左に流れる。6速全開、メーターは280km/h、なんていう状況で、スパっとアクセルを閉じると、バイクごと左の方へ吸い込まれてゆく感じがして、結構コワい。まあ、これらは「慣れが必要」といった域を超えるほどのものではない。

K1200SはBMWらしく、”ヒューズ一つない”B社製の最新の電装系を採用している。メンテナンスフリーなのはありがたいが、B社製テスターなしにはトラブルの際はまったく手が付けられない。雨中走行のあと、イグニッションを切ってもテールランプが点灯したまま、というトラブルが一度だけ起こった。どうしようもないので、テールランプのバルブを外して、ハーネス類をエアで吹いて、待つ事一昼夜、再び接続したら、消灯していた。原因なんてわからない・・・・。

更に電装に関しては、12Ah(YTX-14BS相当)というバッテリーの容量設定は低すぎる。というより、イモビライザーの回路設計自体を見直す必要があるだろう。冬場エンジンをかけずに2-3週間も放置すると、イモビの消費電力のせいで、バッテリーはすっかり「アガッて」しまう。当然、バッテリーへの負荷もきつくライフも短い。

 

K1200R

 

このK1200シリーズに乗って、アウトバーンを走っていると結構注目を集める。自国製の最新・最速モトラッドには皆興味があるらしい。SAなどでは、ハーレーに乗ってる猛者までもが、「何馬力でてるんだい?」などと話しかけてくる。「etwa 170PS」なんて答えを聞くと、妙に嬉しそうに微笑みながら立ち去ってゆく。このK1200Sが、誇りある、ドイツ製工業製品の一翼を担っていることは疑いがない。