K1200S
BMWは大嫌いだけど・・・・
僕って結構ミーハーなので、ニュルをかっとんでるK1200Sを見たら、欲しくなった。ドイツでK1200Rをレンタルして乗ってみたら、なんとも快適かつ、速かった。アウトバーンを200km/h以上のペースで流して、一日1000km以上走っても、とっても楽チン。「BMWは疲れないバイク」っていうのはでっかいフェアリング付きのRシリーズに限ったことじゃなく、Kにおいても同様だった。
欲しかったゾンネン・ゲルプで、走行4000km、2年落ちの出物があったので購入した。買った後、一年の間に、九州、東北、佐渡とツーリングしてかれこれ10000kmは走った。高速道路を長距離走るツーリングには、ほとんどK1200Sででかけた。そうしたシチュエーションでは他のバイクに目が向かぬほど、速くて、疲れなかった。岡山から、中国・名神・中央・圏央・関越と高速を辿って、GWの渋滞を掻き分けながら、丸一日走りきっても、まだまだ走り続ける余力が残っていた。
メーターは完全にスケールを振り切るし、タイトなコーナーでも車格をもてあますことはない。塗装の質は日本製やイタリア製のオートバイとは比較にならないほど上質である。ホイールやエンジンのカバー類に始まり、ブレーキレバー一本に至る細部まで、入念に設計され、芸術品的に造形されている。国産スーパースポーツがいかに性能的に優れていても、もうこれは全く、格が違う。
いただけない点はと言えば・・・、まず何よりもABS。ブレーキのサーボアシストは比較的ダイレクトで好感がもてるが、ABSだけはキャンセルできるようにして欲しかった。いわゆるインテグラルブレーキシステムが採られていて、Fブレーキレバーのみで前後輪ともに制動するのだが、ハードなブレーキでは容易にリアがホッピングしてしまう。この際、後輪のロックを察知してABSが作動する時に、フロントブレーキの油圧までを逃がしてしまい、結果として制動距離が延びる。コーナーの進入でABSが作動すると、結構コワい思いをする。K1200SのABSはB社(日本のK社もこのB社のABSを採用している)が開発しているのだが、K1200S(サーボ付)の時点においては、オートバイをスポーティに走らせるには、まだまだ荷が重い。現状、オートバイ用のABSに関してはH社の自社開発のものが一番優れているらしい。
シャフトドライブのクセも比較的強くでる。左コーナーで深く曲がり込むには車体が置きあがらないように、スロットルを開くのを一瞬待つ必要がある。高速からの急なアクセルオフでも、車体が左に流れる。6速全開、メーターは280km/h、なんていう状況で、スパっとアクセルを閉じると、バイクごと左の方へ吸い込まれてゆく感じがして、結構コワい。まあ、これらは「慣れが必要」といった域を超えるほどのものではない。
K1200SはBMWらしく、”ヒューズ一つない”B社製の最新の電装系を採用している。メンテナンスフリーなのはありがたいが、B社製テスターなしにはトラブルの際はまったく手が付けられない。雨中走行のあと、イグニッションを切ってもテールランプが点灯したまま、というトラブルが一度だけ起こった。どうしようもないので、テールランプのバルブを外して、ハーネス類をエアで吹いて、待つ事一昼夜、再び接続したら、消灯していた。原因なんてわからない・・・・。
更に電装に関しては、12Ah(YTX-14BS相当)というバッテリーの容量設定は低すぎる。というより、イモビライザーの回路設計自体を見直す必要があるだろう。冬場エンジンをかけずに2-3週間も放置すると、イモビの消費電力のせいで、バッテリーはすっかり「アガッて」しまう。当然、バッテリーへの負荷もきつくライフも短い。
このK1200シリーズに乗って、アウトバーンを走っていると結構注目を集める。自国製の最新・最速モトラッドには皆興味があるらしい。SAなどでは、ハーレーに乗ってる猛者までもが、「何馬力でてるんだい?」などと話しかけてくる。「etwa 170PS」なんて答えを聞くと、妙に嬉しそうに微笑みながら立ち去ってゆく。このK1200Sが、誇りある、ドイツ製工業製品の一翼を担っていることは疑いがない。