ウオッブルとの戦い

ステアリングダンパー

このXJR、FJ以来の空冷エンジンは最高なのだが、車体回りは本当に弱い。フレーム自体の鋼管も厚みがなく弱い上に、エンジンマウントも振動対策のため、後側はフローティングされている。

この車体に、ジャイロ効果が低減する軽量ホーイルを履かせ、高速域でバンプを拾うと、もうどうにもならないウオッブルがでる。レース用のハイグリップタイヤを履いて高速なんかを走ろうものなら、それこそライダーを振り落とさんばかりの勢いである。

XJRの足回りも、後年式になると、ホイールやらブレーキやらが変更され、フレームにも改良がほどこされたのだろう。あるいはネイキッドでバカ走りするライダーも絶えたのか、あまりこの振動のことは言われなくなった。

どうしようもないほど、突然大地震のようにやってくる、このウオッブル対策には大分悩まされた。で、以下はその忘備録である。

 

フロント

 

XJRはフレーム剛性が低く(フレームに穴をあけて見るとペラペラ)、サスのジオメトリー等もあって、フロント加重の要求されるSPタイヤを使用(特にD208など)すると、ストレートを走れたものではなくなる。セッティングの悪い状態で180km/h以上でバンプを拾うと左右フルロックのウォブルが出て、振り落とされそうになる。


対策として・・・
・結局D社製ハイグリップは履かない。ノーマルでも、モディファイしてあっても結局D社のSPはマッチング最悪が最悪。平滑なサーキットでは走れるセッティグが出ていても、少し磨耗した状態で高速道路を走るなど危険きわまりない。コンパウンドの硬く、プロファイルも違う普通の207、20では問題がでることは少ない。
・XJRにはBT012、BT56SSがSPタイヤとしては最高のチョイス。ウオッブルも比較的穏やかにでる。B社のタイヤはプロファイルの関係上、一般道で使用すると、軽くバンクさせたあたりの磨耗が早く、ライフは短い。
・フレームのウレタン補強はXJRのような肉厚薄いフレームには効果がある。経年変化でどうなるかは不明。その後溶接加工等した時にも同部に穴あけて追加注入すれば大丈夫だろう。

実例への傾向と対策

1) 高速でバンプを拾うとウォブルが出る。また高速旋回時にフロント周りのヨーがでる。

リヤタイヤが受けたバンプをフレームが吸収しきれず、それがステアリングまで伝わって起こるなんてことが良く言われる。どうやら振動のきっかけはフロントが拾っているようで、リヤ周りからの共振が加わるらしい。タイヤ幅が広いほど、またスピードが上がるほど強くなる。もちろんステアリングダンパーなんて無効。
対策
・タイヤ選択に際してトレッド剛性の高いタイヤがいい
・リアタイヤの空気圧をやや高めに
・フロントフオークの縮みの初期減衰を上げる(簡単なのはフォークオイル、スプリング交換、初期減衰の問題なのでスプリングはシングルレート(0.9程度)がいい
・車体剛性全体の問題なので、フレームやスイングアームの補強
・リヤショックの伸び側減衰をとりあえず低めにしてみる
・フロント周りをモディファイするときはあまりキャスターを立てない
・軽いホイールを履くと、ジャイロが現象されるので、増強される
・D208などのD社のプロファイルだと、どんな対策をしても、結局ウォッブルは発生する

 


2)急な倒しこみ時のハンドルの振れ(サーキットでしか起こらないけど)

ハイグリップタイヤに変更゚したことにまつわるフロントの剛性不足である。よってスタビライザー、ステムやフォークの剛性アップで解決する。姑息手段としてはフォークの突き出しを替えてトレールを減らすとか、ステダンもある程度は効果がある。ちなみにリアを上げたり、フォークの長さを短くすればればキャスターが立って、フロント加重が増えるので、切り返しもスポーツバイクみたくなるが、やりすぎるとハンドルが切れ込むし、フロントからスパーッとこけたりする。

3)バンプのある高速コーナーでリアが踊る、車体が泳ぐ

これは主にスイングアームの剛性不足で左右のアームのよれによる。2本サスのバイクはある程度しかたない。スイングアームを補強して、ピボット部に補強もいれて、ピボットシャフトを増し締めすると、ある程度解決する。姑息手段としてはリヤショックの縮側減衰を上げて、プリロートも上げてるか、スプリンクのレート上げる。

4)改造したらリアサスが跳ねて暴れる

上記3の姑息手段などで初期減衰が悪くなると起こる。
いわゆるレイダウンや、見かけの尻上げでアンチスクゥオットが強くなりすぎてもダメ。スイングアームの垂れ角もほどほどにする。アンチスクゥオットはエンジンをチューンしてパワーあがっても強くなる。レースではエンジンのマウント位置やリヤのピボットいじったりもしていた。ピボットが上がり、エンジンマウントが低くなればアンチスクゥオットは強くなる。

5)Fキャリパー交換したらジャダーがでる

きちんとキャリパーのセンターにディスクが来るようシム調節する。AP6ポットに鋳鉄ディスクとカーボンメタルレーシング素材のパッドなんていう組み合わせでは、冷間のジャダーは絶対でる。

6)正直な話

フラットなサーキットでは、ほぼ良いセッティングが得られたが、高速道路などバンプの多いところでは、未解決な問題が山積みのまま。トホホ・・。


 

 

 

 

 

 

XJR1300

 

今まで、たった一台、新車で買った、98年式XJR1300

よくよく考えてみるに、無免許の時からウン十年、免許を取ってからもウン十年、今日の今日まで、新車でオートバイを買ったのは、これ一台だけだ(3月にXT660Rが納車されて、それが新車2台めとなる)。購入当時はBOTだとかTOFなどのレースの絶頂期で、これに引っ張られて、いわゆるカスタムブームの火がついた。ペケジェイなんて、ノーマルのまま乗ってる奴なんていなかった。このXJRもサーキットに引っ張り出される度にモディファイされて、ボディーカラーも、シルバー(オリジナル)、キャンディーブルーを経て、このイエローに落ち着いた。

 

 

宗谷岬にて

 

TOFなんかは、マシンに依存する部分が多く、ある意味全日本選手権以上に注目を集めたが、今にして思えば、走っているレーサーはやっぱり二戦級だった。実際のところ、この手のネイキッドなるジャパニーズ・バイクを、まともにサーキットを走れるように仕立て上げるってのは大変なことだったし、無理があった。ドラッグレースのスプリント版とでも言えば妥当だろうか。

 

XJR1300

 

筑波サーキット

 

このバイクなんか、当時を思えば、涙ものの後付けパーツ・オンパレードである。見る人が見れば、「アハハ」と笑いだしたくなると思う。もちろん、エンジンも一旦全パラにされて、完全に手が入っている。ただし、当時ハヤリのワイセコとかミハラ・スペシャルティものではなく、ヨシムラのビルトインピストンとST-1のカムとちょっと控えめ。それでもシャシダイに乗せると、サ○タで1400だか1500だかにしたバイクよりパワーがでていた。見ての通りFCR41を背負ってのことである。CBR900なんかと走っても、ストレートじゃこっちの方が速かった。

 

XJR1300

 

上は98年当時の画像。
今のフロント回りはY's Gearのものだが、この頃はYZF750SPからの流用。
ホイールは結局割れたり曲がったりしたハイポイント。
リヤブレーキは効き過ぎて危険なので、TZ用だったかのディスクを使って小径にするつもりだった。
ブレンボのフローティングキットをつけたらなんとか使えるようになったので、そのまま使ってきた。 

加速し、止まり、曲がり、壊れない。現在でも、最高の乗り味で、ツーリング用バイクとしては、今でも一番のお気に入りである。

九州にて