XT660R
オーストラリアをDR650で走り回って、帰国して、やっぱり欲しくなったビッグオフ。デザインに惹かれてXT660Rにした。
DR650の油冷エンジンは非力だったが、トルキーでタフだった。足回りにしても、砂漠からハイウェイまで苦もなく走りきる柔軟性があった。XTはどうかと期待していたところ・・・。
「エンジンどうこう言う前にインジェクションのセッティングがボロクソだわ、これ」と言うのが第一印象。と言うより、ミクニ製のインジェクターの構造、マネージメント自体が古すぎる。口径の大きすぎる(50φ)
スロットルボディにシングルインジェクター(なんと12孔ではあるらしいが)。バタフライもメインのみで、トルコン用のセカンダリーはなし。「アレ?」と思ってよく見ると、クランクポジションは拾っているが、カムポジを拾ってない。オートバイのチッこいECUじゃクランクモーションなんて演算できないだろうから、捨て火花飛ばして、インジェクターも裏吹きしているに違いない(*注記1参)。燃調はTPSで拾ったアクセル開度とエンジン回転数で安易なマップを書いて、それに吸気圧と吸気温で僅かに補正をいれているだけだろう。一応O2センサーも付いてるから低回転・低開度域では5%MAX程度の噴射時間補正が入るのね。点火時期にしても、40度くらいで頭打ちの右上がり一次曲線をテキトーに平面に伸ばして打ち込んだだけだろう。ノックセンサーもなし。排気デバイスもなし。ドンツキ・カスカス・モワモワ・・・、カーノックの嵐。更には、急なガレ場の下りを極低速で、エンジンブレーキだけを頼りに下ってゆくと、粘りなくあっさりとエンスト。「素人がセッティングした方がまだマシなんじゃないの?」と思いもするが、精一杯やった結果がこれなのだろう。DRのキャブの方が100倍マシ。性能向上のためではなくて、キャブじゃエミッションコントロールをクリアできないので、間に合わせでインジェクション化しただけとしか思えない。
(*注記1:この点は早合点で、クラセンだけで720度毎の点火と噴射を制御している。下述のRB3の段落を参照されたし。)
エンジンのスペックを見ると100 X 84mmのBore x Strokeは98までのXTZ660と共通だが、セラミックコンポジットメッキされた低圧鋳造シリンダーが新採用されている。 ヘッドは新設計のようで、以前の5バルブは廃されオーソドックスなSOHC4バルブを採用。圧縮比も98TENEREの9.2から10.0へと変更されている。腰下の詳細は不明だが、クランクケースのレイアウト・外観は酷似している。前述の変更に伴い、98TENEREで46PS/6000rpmだった最高出力(Y26PVキャブ)は48PS/6000rpmへと若干向上している。新設計というより、時代に合わせた仕様変更に過ぎない気がする。前述のエンジンマネージメントの点に関して敷衍すれば、旧XTZのアイドリング回転数が1150rpm(点火時期は10deg BDTC@1150rpm, 43deg BDTC@6500rpm)にであるのに対して660R/Xのそれは1400rpm(9deg BDTC@1400rpm)。FI化しながらもアイドリング回転数を従来より高めに設定せざるを得なかったことからも、低回転域でのバランスの悪さが窺われる。
EURO2だかのエミッションコントロールをクリアしなければならなかったエンジニアの立場に同情しない訳でもない。EUでの規制はかなりシビアで、120分だったかの10モード的走行によって排出されるエキゾーストガスを実際にエアバッグに溜め込んで測定するらしい(4輪の話で2輪がどうかは知らない)。測定の走行モードに含まれる高速走行の時間は僅かなので、いわゆる市街地走行のための低回転域でのエミッションを特に抑制する必要がある。NOxのことを考えずにCOの排出だけを減らすならば、とにかく燃料を吹かないに越したことはない。このXTの場合にもこれが災いして、低アクセル開度の領域は燃調が薄すぎる。3速30km/hrからアクセルを開き始めると、スナッチの連続だし、「加速噴射!」なんて勢いつけてアクセル開いたって、余計シャックリが酷くなるばかり。5速ノンスナッチなんてとても試せる状態じゃない。燃調マップをリーンに書かなければならないなら、当然、大きめに加速補正を掛けなければならないのだが、これが補填しきれていない。それにスナッチなんて、緩やかにアクセルを開いてゆく、非同期噴射の効かない状況で起こるもの。大きめのベンチュリー径が災いして、低流速域での霧化の悪さもこれに拍車をかける。”細めのエキパイ二本出し”なんて姑息手段にでるなら、インマニを二本にして小口径のスロットルを二つ並べて、かつ小容量インジェクターを使い、エキゾーストにはお得意の”EXUP”を使えばいいじゃない。クランクマスだってあと20%くらい余計でも良い気がする。660CCもあるので、中開度域はまあまあ快調に走るが、トップエンドはまた濃すぎるセッティングで、中東などでの質の良くないガソリンの使用を想定しているのか、プレミアムガソリン指定の割には点火時期も遅すぎる感がある。
購入後、「ならし」を兼ねて出かけた九州ツーリングで、約2000km、林道(オン・オフ)、市街路、高速道路など、およそ国内で考えられるあらゆる道路状況を走った。1、2速だけで走るオフロードでも17-18km/l、舗装の林道を飛ばし気味に走って20km/l、郊外の一般路では22km/lと、こうした使用状況での燃費はまずまず。ところが、高速道路を走る時には燃費は急激に悪化する。この手のバイクの最高速なぞタカが知れていて、メーター読みで170km/hr、GPSの示す速度で(追風参考記録^-^)160km/hr程度。当然、すいている高速道路を走る時はアクセルをストッパーに当てたまま開き続けることになる。エンジンを気遣いながら、90-95%開度を保った時の燃費たるや、なんと13km/lだった。満タンから僅か130km走行しただけで、燃料警告ランプが点灯する(15リットル容量のガソリンタンクは残量5リットルで警告ランプが点灯する)。デトネーションやピストンの冷却等々、ビッグシングル故の諸問題があり、DR650あたりもスロットル全開域ではかなりリッチな燃調になっている。しかし、折角インジェクション化したのだから、ここらトップエンドは、もう少しリーンかつ進角も入れ、ノッキングにはセンシングで対応するのが当たり前(シングル故の振動により、ノックセンサーの誤作動でも生じたのだろうか)。
足回りにしても、初期入力で柔らかく動くフロント(0.38/0.61kg/mmの二段レート)に対して、リヤはスプリングも減衰も固すぎる。ボトムリンクと呼ばれるヤマハお得意のリンク形式に12.75kg/mmのスプリング。EUマーケットをターゲットとしたバイクにありがちな、二人乗りを前提としたバネレートとリンク比選定なのだろう。それにしても、スイングアーム移動量に従いプログレッシブにレバー比が働くのだろうから、1G付近の荷重でここまでサスが動かないのは絶対におかしい。リンクのリレー部分を分解して、動作を確認し、グリスアップの上再度組み上げ、チェーンに遊びも持たせたが、結果は同じだった(後述のように、走行5000kmを超えた頃からショックに”あたり”がついたようで、徐々に柔らかくなった)。
オフロードに乗り込んでみるとフロントも奥では固すぎ、バイクごとハネてしまって、ヨレヨレ走るのが精一杯。まるで楽しくない。「流行りのモタードバイクの逆展開オフ車風バーション」というか、舗装路中心にセッティングされた、「オフロードも何となく走れますよ」仕様。つまり、BMやらDUCAのデュアルパーパスと同じ指向性の”似非オフローダー”。未舗装路の状況も、例えばピレネー辺りと日本では全く異なるのだから、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。
それなのにFブレーキのマスター比とパッドの特性はオフロード向けで、舗装路で握り込んだ時に2次曲線的に減速せず、バイクが前へ逃げてしまう(機械制御のFast idle plungerの為だと思うのだが、2500rpm前後で切り替わるインジェクションマップのせいで、この回転を境目に急に効かなくなるエンジンブレーキがこれを助長する)。オフローダー指向の強めなマルチパーパスと呼ぶのが的確で、XTにDR的な無骨さを期待した自分が愚かだったのだろう。購入前に参考にした雑誌やWEBの記事には、このあたりが全く指摘されておらず、乗る側の素養にも当然問題がある。経費節減でまともなテスターすら雇えず、脳天気なインプレしか書けないなら、メーカーの広報資料でも丸写しにしておいた方が遥かに分別がある。
設計・生産ともに主導はEUだとしても、大好きなヤマハの名を冠したバイクが、こんな中途半端だなんて、なんとも想像外で、がっかりしてしまう。
標準で履いていたのは画像の如きMETZELERの「オフ風オンロードタイヤ」でコイツが良く滑る。元々ヨーロッパメーカーのタイヤはライフを気にして暖まるまではグリップしないものが多いが、上述のインジェクションのセッティングと固いリヤサスのせいもあって、すぐにケツが出る。「最初の一皮がむけるまでのこと」と考えていたが、これはもうこのバイクとタイヤの特性なのだろう。この点からみても、乗ってオイシイのは、660Xの方で、グリップの良いタイヤで、エンジンを回して乗る仕様なのだろう。
もうひとつ驚きだったのが上の画像。新車から150kmほど走行した時点でエンジン回りを見回すと、オイルがにじんでいる。「はて?」と思い周囲を見回して唖然!。生産過程でオイルラインにガスケットを組み忘れている!!。アメリカやイタリアのメーカーならいざ知らず(まあ実際はこのバイクはイタリア製みたいなものだが)、日本のメーカーの名を冠したオートバイにあってこんなことは起こり得る筈がない。いたずらに騒ぎたてるつもりはないが、ここのG/K一枚足りないということは、即ちエンジン内部の部品すら組み忘れているに違いないという憶測を招くことになる。品質管理上の大問題である。
このバイクは、かの有名な某量販店で購入させていただいたプレストの正規もの。たかだか銅ワッシャくらい自分で手持ちのものを入れても良かったのだが、今後何かあった際にクレームが効かなくなると困るので、修理に参上した。確かにメーカーの落ち度で、販売店に責がないなのは明らかなのだが、若いメカニックさん、申し訳のありなしになんてこれっぽちも気が回らず、「じゃあ、ガスケット取り寄せときますね」のたった一言。呆れ返って苦笑するよりなかった。「一応プレストにはクレームとして上げておいてね」と、こちらからお願いする始末。結局、持参した自分の銅G/Kセットを手渡して、応急的に組んでもらい、後日部品到着後、正式修理とした。
余談にはなるが、「古き良きバイク屋の時代」が過ぎ去った今こそ、二輪業界に巣食った時代遅れの利権をぶち壊し、二輪車のディーラー販売網を整備する好機ではないかと思う。ホンダやスズキは自社の4輪ディーラーに二輪を扱わせれば良いし、ヤマハはトヨタ系のディーラーを頼れば良い。販売後の車両の不備に対するクレームやF/Bが得られる販売網を整備することにより、品質向上だけではなく、設計上のマージンを削ることができ、コスト削減にもつながる。販売網との交渉次第では販売経費も削減できる。四輪ディーラーを訪ねる若者に二輪車の魅力を啓蒙できるので、若いユーザー層の開拓にも有効である。老い先短い、腐ったオヤジライダー相手に商売するより遥かに建設的である。YSPやらWINGやらの既存の勢力や、自称バイク屋のクズ屋どもには、段階性の販売報奨金でもバラ巻き、上手くマルメ込み、販売の手助けをさせれば良い。まともな整備のできるところなんて、もう一握りしか残っていないし、今後電子制御主体となってゆくオートバイを扱えるような知能なぞ、連中は持ち合わせていない。専用のテスターを備える経費的負担にも耐えられないだろうから、それだって口実になる。え、「川重はどうするのか?」って。どうせドラッグと市販車レースにしか用のないメーカーだし、二輪車を生産してる事自体が不自然。軍用機とか電車とかに徹して、”伝説”として消え去るのが潔いのではないだろうか。
まあXTに話を戻せば、車格と高い着座位置のおかげで舗装の林道を走るのはそれなりに楽しい。取り敢えずリヤショックとタイヤを交換して、あとはサブコンを手に入れて、なんとか「乗れる」仕様にするつもり。サブコンはPOWERCOMMANDERやDIMSPORTあたりからでていて、後者は点火時期の変更も可能。リヤショックに関しては、かつてOHLINS から販売されていたYA-418は不人気車種故に廃盤、入手不可。海外のデッドストックも当たってみたが見つからなかった。ざっと調べた限りで、現在販売されているのはBITUBOのViaggio XZE01 (P.No.00065085)だけ。660X/R共通品番なので、スプリングレートも高いままだろう。BITUBOはレートの違う交換用スプリングもラインナップしているが、さて、わざわざ買うほどの価値があるやらないやら・・・。
つべこべした苦言のついでではあるが、ポンダー入りのセキュリティキーなんてバッテリーとメモリーを浪費するだけだから不要。そんな事の前にやることがある筈。ストックの状態で秀逸なのは外装デザインだけなのか、あるいは期待する路線が間違っていたのか???
追記1 (2010年9月)アクラポビッチがやってきた
その後、上の画像のようにサイレンサーをアクラポに換装。抜けが良い分、中低速の燃調は増々リーンになってギクシャクしてしまうので、インナーサイレンサーは入れたまま(それよりも”良識”の二文字が漢字で書ける程度の脳ミソがあると、アクラポの音量では御近所を走れない)。ここでS/Mに目を通すとCOレベルの調節ができるらしい。どうやら基礎噴射時間の変更ではなく、O2センサーからのFeedBack補正に際する係数設定のようである。この手のF/Bが効いているのは通常TPS開度20-25%程度・回転数で3000-3500rpm程度までである。イジったところで、体感できるほどの補正は効かず、濃くしたところで、プラグをカブり気味にしてしまうのが関の山だろう。それでもEU-2クリアの為に、リーンにマップを書いたが故のせめてもの罪償いとして、カーノック対策の為の裏マップ的な使い方ができるかも知れないと思って、取り敢えずアレコレと数値を変更してみた。
出荷時設定が「14」だったものを、北海道をツーリングしながらアレコレ変更して現在は 「30」。感触はといえば、「ウーン・・・、やっぱりダメだ」。調節を試みるだけ時間の無駄。リッチに振りすぎると、低開度走行の連続においてプラグはカブり気味になるし、高速走行の連続後にすっぱりスロットルを閉じ、クラッチを切ると、あっさりエンストしたりする。やはり本腰を入れ、問題となる回転域での噴射時間と点火時期 の双方を書き換えてしまわないとどうにもならない。いくら品質管理がショボくても、メーカーだけに、ベースマップ自体は(リーンであっても)しっかり書いてあるのだろう。スロポジ開度数%、回転数1500-2500rpmなんて領域だけを、カブらない程度にリッチに振って、点火時期をリタードさせる。逆にトップエンドはマージンを削ってリーンにしつつ、点火時期はアドバンスする。あとは噴射時間の加速補正係数を増やすか、センシティビティを上げる。そんな方策は十も承知で、ヤマハもミクニもがんばった結果がこれなんだろうから、サブコンなんかでイジっても駄目な気もする。やはりインジェクションの基本設計が片手間仕事だったのだろう。660ccのシングルということだけで、インジェクター2系統化・セカンダリーバタフライでのトルコンと排気デバイスは必須と考えて当然である。腹いせに言わせてもらえば、KEIHINだったら当然そうしてたと思うし、ノックセンサーが必要なくらいセッティングを詰めていたに違いない。
余談になるが、"ビッグシングルにはPositive Crankcase Ventilation Valve付加によるポンピングロス減少作戦が有効"なんて話も耳にするが、そんなものに中低速域で体感できるほどの効果がある筈ないし、PCVなんて無くても、高回転になればエアクリーナーBOXは負圧になっている。
スナッチ対策には、ジェネレーター回りのマスを追加なんて裏技もあり、結構やっている人もいるようだが、それぐらいでなんとかなるなら、とっくにメーカーがやっていると思う。
まあ、そんな次第で”ダメモト”と考えて、DIM SPORTのサブコンを発注することにした(PowComは点火時期の変更はできないようである)。「本国イタリアから入手するしかないかなあ」と思いながらWEBを覗くと、なんと日本代理店があるらしいので、そちらから入手することにした。かつて、この手の海外製CPUダマしでは相当イタイ目を見ている(汎用のユニット+車種別ハーネスなので、個々の車両への適合性が検証されないまま販売されているケースが多々ある)のだが、「時代も変わっただろう」と、性懲りも無く再挑戦することにした。リヤショックのスプリングのレートを落とすのは、冬場になってあまり乗らなくなってからにするつもり。リンク比を計算してからでないとレートは決められないが、オン・オフ折衷して、11kg/mmくらいまで落とせるかなあ?。フロントの奥のバネレート(K2)も、もう少し落としたい。
それからヤマハ(に限らず、昨今の国内オートバイメーカー)のQCに対する更なる苦言。
「コスト削減の為に海外で部品調達・生産するのは良いが、日本のメーカーたる誇りだけは失うな!!」
上の画像、タイヤ交換の際のリヤホイール。イタリアのメーカー製のリムらしいが、バルブ孔を開ける際にボール盤のチャックが当たってリムまで削っている。しかも、アブナッかしいバリを残したままチューブを組んでいる!!。さらに・・・・。
そのリムのバルブ孔から180度反対方向。穴あけ加工の際にリムを保持する為のクランプでホイールを歪めてしまっている。メタメタに傷つけ、その傷を誤魔化すために、粗目のヤスリで削っている。ここにもチューブを傷つけんばかりのバリが残されたままである。ホイールの変形、さらにはチューブをヤブく危険性。クレームしようかとも思うが、アホ臭くて声もでない。
追記2 RapidBikeがやってきた(2010年10月)
DimSportの日本代理店JAMさんに注文しておいたRapidBike(サブコン)が10月末になって手元に届いた(SYGN Houseさんも自社カタログを拝見する限りは日本代理店のようなのだが、両社の関係は不明)。箱の上に鎮座なさいますのが御本体様で、箱上左手の黒い小さなBOXはRBO2なるO2センサーだまし。エキパイのO2センサー用のフランジにワイドバンドのセンサーを突っ込む時に、STDのO2センサーをキャンセルするために好都合と思い一緒に購入したが、自分が想定していたような使い方はできなかった。
こちらはプリインストールされていた燃調のベースマップ。1%ステップでインジェクターの開弁時間を増減できる。STDでリーンに振ってある低アクセル開度・低回転域をリッチに振って、逆に高開度・高回転域の燃料噴射時間を絞っている。トップエンドはリーンに振り過ぎてエンジンを壊さないようイジっていない。まあ、定石どおりのマッピング。
こちらは同じくプリインストールされていた点火時期マップ。0.5度ステップで点火時期の変更が可能。中負荷域を主体に進角を入れ、噴射時間と同じくトップエンドはエンジンを壊さないよう殆どイジっていない。スナッチを起こす低回転・低開度域はノータッチで「0」の羅列。燃調マップと同様、ライトチューニングとしては、こちらも”当たり前の方向性”。今回はピークパワーが欲しい訳ではなく、低速域でのライダビリティ改善が主眼。中高回転域に関しては、「Dim社だってダイノマシン上で走らせてるのだから、点火も燃調もこのままで良いんじゃないの」なんて、セッティングに入る前は考えていた。
インストールはいたって簡単で1時間もあれば、完了する。RB3ユニットとRBO2モジュールは画像のように、テールのグローブボックスに収納された。インストールはあっさり完了したものの、さすがにイタリア製。どうやらRB3ファームの問題でRBO2 Moduleが認識されない(こんなこともあろうと、事前にメールで確認したのになあ・・・)。セッティングソフト上でも、通信エラーなどのマイナーエラーが多発。
どうやらDim社はDyno-Machineのイタリア代理店らしく、そうした経緯から2輪・4輪向けのサブコンとセッティングツールを自社開発するに至ったもよう。RB3に関して言えば、スロットル開度の軸が少なすぎたり、思い通りに回転数の軸を区切れなかったり、F/B学習機能がなかったり、しょっちゅうソフトの画面がフリーズしたり、データが壊れたり、そんな”可愛い?”問題は多々あるものの、エンジンは無事始動したし、ちゃんとマップを読んでゆく。怪しい日本や米国のメーカー製に比べれば”花丸”付けてあげたくなる出来栄え。
で、画像のように空燃比計(ワイドバンドのセンサー取付にはオリジナルのラムダセンサー孔を用いた)と回転計をセット。Secondary Air Deviceは生かしたままで、とりあえずお散歩に出かける。
シャシダイナモだと、スナッチの起こる条件やら、バイクが前にでてゆく感じがつかめないのて、まずはノートPC片手に実走しながら方向性を決めてゆく。四輪だと助手席にオペレーター乗せて、書き換えてすぐ踏めるので、変化が掴み易いが、バイクの場合はいちいち止まらなきゃならないので、細かなフィーリングの変化がわかりづらい。
方向性が見えたところで、シャシダイ上でセッティングを煮詰める。データロガーを使ってチマチマやるほどのセッティングではなさそうなので、AIS(二次エア)もO2センサーも生かしたままで、A/F計を参考程度に覗きながら、感覚だけで、「あーじゃない、こーじゃない」言いながら詰めてゆく。ちなみに助っ人のPCオペレーターは某電装メーカーのエンジンマネージメントのプロ。
ところで二輪のチューニングを生業にしている奴なんて、ごく最近までレースメカでもやってた者以外、FIに関しては知識も経験もない輩がほとんど。リターダーすら付いていないダイノマシンでセッティングしている猛者まで居る。負荷のかからないシャシダイでのセッティングなんて無意味だってことすら気づいてない。
Dim社の製品はRdPをマスコットにしながらMOTO-GPで実際に使用されているらしいのだが、いったいどんな実証があって、このXT660R/X向けのベースマップを作ったのだろう?。プロショップが使うRB-Managerには、セッティングベース車のエキゾースト変更などの詳細が記されているようだが、ユーザーサイドではわからない。実際に走らせてみると、点火時期も燃調も、ひたすら思い込みの数値をいれただけだってことに気づく。殊に点火時期に関しては、ローコンプなピストンやリフトの低いカムにでも交換しない限り、絶対にあり得ない数値が打ち込まれている。
こちらはセッティング後の点火時期マップ(サブコンなので3次元マップはストックのマップに対する増減を示している)。メモリーの制限のためメーカーが煮詰めなかっただろう低回転・低開度域に200-300rpm・2-5%の毎の細かいステップを切って詰めてゆく。スナッチの出る領域ではTDCでのシリンダー内圧を下げる為、リタードさせ、その辺縁では加速がモタ付かないよう早めにアドバンスさせてゆく。ストックの点火時期は9.0°BTDC/1400rpmなので、4°以上リタードさせるとMBT Timingから外れすぎて反ってスナッチがひどくなった。
高回転域では、この逆に、点火時期をアドバンスさせてゆくのだが、思い込みだけでDim社のように進角させすぎるとパワーがでない。
ごちゃごちゃしてわかりづらいが、下側グリーンの二本がノーマルとDim社ベースデータ。ほとんどくっついてるが、上側の滑らかな方がノーマルで、下側でぶれてる方がDim社のもの。Dim社のものは、むしろ若干だがパワーダウンしている。「線がブレるのは燃調が薄いか、点火時期が早すぎるかの何れかです」と即答できたらお利口さん。で、点火時期はそのままにA/Fを12台後半から13台前半で詰めたのが赤いライン。A/F計上はいい線いっているのだが、もう一つパワー感がない。たまにはA/F 11代が見えるくらいにリッチに振ってブルーのライン(トップエンドでは上から二番目)。そこから、ほとんでノーマル状態の点火時期まで戻したのが一番上の紫のライン。6500rpmからリミッター(4速)の入る7200rpmまでは、まだラインがぶれているので、さらに遅角させて、一つ前の画像の点火時期マップのできあがり。(*AISをオミットしていないので、ここでのA/F値は単なる目安として測定している)
こちらは燃調マップ。スナッチのでる低回転・低開度域を、ややRich (A/F 12.5-13.2程度)に揃えてゆく。中・高負荷域はメーカーの見込んだマージンを削ってリーンにしてゆくつもりだったのだが、アクラポ(インナーサイレンサーはいれたまま)との組み合わせでは結局全域プラス補正。スロットル全開高負荷域では、時々A/F 11台が見える方が調子がよい。で、最後にもう一度実走してみて、セッティング終了。
先述のようにカーノックは通常、加速補正が影響しないような緩やかなスロットルオープンの状態で起こるものだが、加速補正の感度にも若干手を加えた。ここまでやると、低速域でのスナッチは随分と解消された。峠の上りで、今までより1速上のギアを選択してもなんとかトコトコと登れるようになり、リッチな分、ギクシャクせず、スロットル操作にマッタリと応答するようになった。中負荷域では、グッとバイクが押し出されてゆくような、ストックの状態にない力強さが加わった。
RBO2-moduleなるラムダセンサーダマしはRB3ファーム上では機能しないし、単体で使用しても大した補正は効かないみたい。機能しない原因に関しての問い合わせへの返答も未だこない。単体での出力を+-0にして、現状、お蔵入り。
ここで再びサブコンを外し、すっかりノーマルの状態で走行してみて相互を比較してみる。結局のところ、体感できる差は僅か。サブコンあり・なしの二台並べてブラインドテストしたって、リターンライダーやBMオフローダーみたいな方々には全くその差が察知できないだろう。
結辞1:VFMを考えれば、サブコン買うのはお金の無駄!
結辞2:セッティングに費やした時間こそ浪費!
教訓:メーカーのエンジニアはやっぱりプロ。プロがやってだめなものはだめ!
点火時期にせよ、燃調にせよ、やはりメーカーは凄い。冒頭で様々な苦言を呈したものの、メカニカルなエンジンレイアウトが変えようがないとすれば、最大公約数的なインジェクションセッティングとしては、ほぼ完璧である。センシティブな単気筒エンジンにあって、中回転域の点火時期なぞ、1度たりともずらせない。この点火時期にしても、クラセンだけで720度を判別している(始動時に360°毎にテスト噴射・テスト点火を行い、クランクモーションにアクセレーションが認められるTDCを圧縮上死点と判別するのが一般的)。O2センサーのF/Bにしても、ユーザーサイドでのエキゾースト交換くらいは充分寛容し、補填してしまうだけの柔軟性がある。
サブコン使用でトップエンドのパワーが出たのは、やむなく設定されたマージンを削ったに過ぎない。殊にカーノックなどのライダビリティに関して残された諸問題は、メーカーのエンジニア・テストライダーが散々、試行錯誤し、時間を費やしても解決することのできなかった領域である。素人がサブコン使ってどんなに頑張っても、自分好みの色に塗り替え、自己満足に浸るのが精一杯である。この逆に、メーカーサイドで敢えて設けたマージン(点火時期やら、濃いめの燃調)を削ってピークパワーを上乗せするだけなら、そんなこと猿にだってできる。
なんか悔しいので、「他の人達はどんなふうにしてるのだろう?」と思って、WEBを検索してみたら、ありました”XT660.COM"なるサイト。運営しているのは、現在オーストラリア在住の英国人KEVIN氏なる人物とその友人らしい。それにしても、イギリス人のバックヤードビルダー魂って凄い。”吸気温センサー騙し”を使っての燃調変更とか、ガソリンタンク容量1L増しだとか、果てはRaptorのピストンとシリンダーを流用してのボアアップまで、チープ&シックなモディファイの数々にはまっこと敬服してしまう。で、やはり彼らもカーノックに関しては相当気になるらしく、低開度域の燃調を濃くすることで対策をしている。ここにPowerCommander使ったセッティングの結果があったが、吸排気系の大きな変更なしでは、やはりノーマル状態に対して2HP上乗せするのが精一杯のよう。
吸気量が増えれば、スロットルボディ径も、エキゾースト系も相対的に低容量となるので、低速域のトルクも上乗せされるに違いない。「可能な限りSTDで」と思っていたが、やっぱこのままじゃ引き下がれない。で、次なる泥沼に突入してゆく。
追記3 DNA STAGE3がやってきた(2010年11月)
そんな次第で、性懲りもなくDNAに発注してしまったのがStage3なる以下の画像のエアクリーナーセット。国際郵便も到着が早くなったもので、発注して1週間足らずでギリシャからやってきた。ところで、このフィルターキットのシリアルNO.は何と「23」。「01」はDNAの試作品で、「02」は上述のXT660.COMのKEVIN氏のもとへデリバリーされたらしいのだが、世界広しといえども、€450もだしてまで、XTにこんなキットを装着しようなんてバカは、今のところ23人くらいしか居ないらしい。
€450というこの価格で、プレスの金型やら、ゴム・プラスティック製品の型やらにかかるコストを考えたら、相当の数を販売しないことには元が取れない。元など取れないことを承知で、ユーザーの熱意に押されて、こんなバカげた商品を開発してしまうDNAなるメーカー、大したものだと思う。
後述のショック交換作業の際、「二度とやりたくない」と思ったエアクリーナーボックス外しを再度繰り返し、インストールの完了したキット。おちゃらけた感覚的セッティング変更だけではどうにもならなかったので、今度ばかりは徹底的にやる!。
上の画像の通り、セカンダリーエアデバイスのパイプとシリンダーヘッドとの間に削り出したアルミ板を噛ませてAIS(二次エア)を殺す。ついでにAirBoxからのエア取り入れ部にもキャップをしておいた。
Secondary Airが導入されないとなると、連鎖的にO2センサー部でのA/Fに変化が生じ、F/B制御に影響が及ぶので、O2センサーを殺してしまう必要がある。触媒効率の最適化のため、トップエンドではエキパイが真っ赤になるほど2次エアのせいで”後燃え”している。XT660の場合はO2センサーを外して、センサーへの中枢側コネクターの桃・赤/白間に330Ω、灰・灰/緑間に47KΩのレジスターを噛ませることでこれをキャンセルできる。使い物にならなかった「RBO2モジュール」にもここでサヨナラ。
ところでDNA STAGE3には、Power CommernderのFuel Map Dataが3種類ほど添付されていて、Power Commanderのユーザーなら、そのデータをインプットすれば、そこそこのセッティングで走れるようになっている。上の画像はAkraのインナーサイレンサー無バージョンのデータを開いたところ。結構しつこくDynoRunを繰り返して作成したデータのようで、RapidBikeのでたらめでいい加減なプリインストールデータに比べたら、雲泥の差のある作り込みようだ。
DNA STAGE3キットを装着すると、予想していた以上に吸気音がやかましい。インナーサイレンサーを入れたAkraの排気音より、遥かに吸気音の方がやかましい。Akraのインナーは上の画像のような作りで、結構な排気抵抗となる。相当音量は絞られ、その静かな音の方が自分は好きなのだが、どうせ吸気音がうるさいなら、この際サイレンサーももう少し”抜け”を良くしてもいい気がする。かといって、Open CanのAkraの音は、ブラックホークヘリみたいにやかましくて、耐えがたいし、抜け過ぎて低速トルクが完璧に犠牲になる。
インナーサイレンサーは、Akraでは単体販売していないので、加工したくない。外形43.5mmの汎用インナーサイレンサーなんて販売しているわけないし、仕方なく自作することにした。薄手のステン板でも溶接して作るつもりで、「あーあ、また半日がかりだよ」とブツクサ言いながら、部材入れを漁っていてふと目についたのが、上の画像のフォークキャップ。たしかGSXR1100Wから外したものだったような気がする。ネジ部の外形を計測すると45mm。予想される消音効果も抜けも、まあまあな気がする。
”ダメモト”と思い、ササッと旋盤に掛けて、外径を合わせ。内径も少し広げて・・・・。
装着してみるとご覧の通り。音量もまずまずで、これなら御近所を走れる。A/F計の変化を見ると、抜けもそこそこいいみたい。見た目のお化粧は後回しにして、取り敢えずこれで再セッティングを始める段取りがついた。脱落時の為のワイヤーロックはご愛嬌^-^。
今回は助っ人も居ないので、たった一人シャイダイに乗って走りながら手を伸ばしてノートパソコン打ち。もう一台ノートパソコンを並べて、A/Fと回転数だけはロギングすることにした。
さてさて、あまり意味はないが、参考の為まずはパワーチェックから。一番上の赤のラインが「Stage3 AirBox + Akra(自作インナー)+ RB3」で、S3 AirBox添付のPowComのデータを参考に適当な数値を打ち込んだもの。後軸出力で52PS。一番下のグリーンの二本が「STD AirBox + Akra(STDインナーあり)」で45PS。そのちょっと上のブルーの滑らかなブルーのラインが「STD AirBox + Akra(STDインナーあり)+RB3セッティグのもので47PS。全て気圧・気温補正はなし。(大きくぶれているグリーンのラインはレコーダーがノイズを拾ってしまったものなので無視)
こちらはDNA AirBox Kitに添付されていたDynoMachineのデータで、STDの47.93PSに対して、「Stage3 AirBox + STD Ex. + PCセッティング」が54.62PS。シャシダイの差もあるので、出力値をそのまま比較するのはナンセンスだが、こちらも約7PSの上乗せ。
”人と同じ”ってのは嫌いなタチなので、少し真面目にセッティングして、全域A/F12台後半から13台に揃えた。上の画像は100%開度のロギング結果で、緑がA/F、赤がRPM。
出来上がったFuel Mapが上の画像。
点火時期は、上図の通りノーマルエアボックスの時とほぼ変わらず。と言うより、先の経験からこれ以上詰める気力がなかった。
仕上げのパワーチェック結果は上の通りで約56PS(ブレはノイズのせい)。モディファイ開始時から比較して11PSの上乗せ。たかが11PSだが、公称出力48PSに対しての11PSだから、「良くできたものだ」と自分を納得させている。
体感的にも数値以上のパワーが上乗せされた感があり、フロントのリフトアップも容易になった。いままでは6000rpm弱でなんとなくシフトアップしていたが、もう500rpmばかり上まで回す気にもなった。最高出力云々よりも、何より上手くいったと、上機嫌なのは低速域。4速で2000rpmを切ってもトコトコ走れる。5速2000rpmからでも、僅かにカーノックしながら加速してゆく^-^。抜けすぎず、呑み込ませるってのが、やっぱりいいみたい。
追記4 BITUBOがやってきた(2010年11月)
フロントフォークのスプリングはデュアルレートでK1/K2が0.38/0.61kg/mm(3.75/6.00N/mm)。ちなみにCR250純正だと、一番固いものでも0.46kg/mm(4.51N/mm)のシングルレート。ロードスポーツの場合0.75kg/mmくらいの車両が多い。フロントフォークは660Rと660Xでは別物で、それぞれのspring installed lengthも異なる(628mm : 588mm)が、K1/K2は共通。共に0-120mmまではK1でストロークし、そのあとRは120-225mmまで、Xは120-200mmまでK2でストロークする。悪路を飛ばし気味に走るとすぐにK1の部分はフルストロークしてしまい、フロントが暴れ出す。それでもオン・オフ折衷されたバイクとしては、車重から見ても悪くないバネレート設定である。自分の嗜好に合ったアフターマーケットのスプリングは見つからない。オイルの粘度と油面変更でも試みて、変化がなければワンオフするしかない。
リヤショックのスプリングのレートは、125.00N/mm(12.75kg/mm)のシングルレート。実際の硬さはリンク比で決まるのでレートだけでは比較できないが、CR250純正を例に取れば、最も固いもので 52N/mm。ちなみにZX6RRのレーシングキットで10-11Kg/mm。発売当初(1998)の柔らかく動くR1で8kg/mm。
新車時、股がっても全く沈まなかったリヤショックは、走行5000kmを超えたあたりから徐々に動き出してきた。走行7000kmの現在、奥ではまだまだ固いものの、1G-0G=40mm, 1G'-0G=70mmと初期入力に対する動きは随分といい。こうなると「ショックはこのままでも良いかなあ・・・」なんて消極的な気分にもなってくる。
2010年現在660R/X用に販売されているリヤショックは、前述の通りBITUBOのY0130XZE01だけで、デフォルトスプリングレートは13.5kg/mm(W18013501)と標準のものより固い。オプションスプリングは豊富にラインナップされていて、バネ長180mm, 内径58.0mmのシリーズから選べばよい(W180xxx01)。
初期貫徹!と意気込んで、結局これを購入。10.5kgのスプリング(W180K10501)もあわせて発注した。
まずは、BITUBO標準の13.5kg/mm、次いで10.5kg/mmのスプリングを組み込んで、標準の状態と比較してみることにする。
ところで、XT660のリヤショック交換、作業性が最悪で、もう二度とやりたくない。「リヤショックの交換なんて30分もあれば充分」なんて気持ちで取りかかったのはいいが、このアッパーマウントどうやって外すの?。悩んでS/Mに目を通すと、外装、ガソリンタンク、リヤホイール、サイレンサー、それからインジェクションボディより後方の全ての部品を外さないと、ショックが交換できないらしい。できる限り横着しても、上の画像の状態まで裸にして、ようやくショックのアッパーマウントが外せる。後述の細かい加工と、外したついでの清掃を含めて、交換に半日を費やした。
BITUBOショックのロアマウントの厚みがノーマルのものよりあるため、マウントボルトのネジ部分にステイブルナット(14mm角)の爪が届かない。かと言って手持ちの薄手のロックナット(17mm角)を使うとリンクに干渉する。仕方なくワッシャーを薄手にして、更に純正のナットを薄く削って、ぎりぎりロックが効くようにした(画像のアームはカワサキ純正46102-1406の加工品に変更してある)。
ショックアブソーバーの長さは、マウント中心間距離でBITUBOの方が1cm弱長い。Pre-load 11mmで装着してみると、シート高は空車(1G)で32mmほど高くなった(pre-load 5mmでは26mm)。スプリングは実測で、長さ181mm、内径58mm、外形85mm。
STD | BITUBO |
BITUBO 13.5 Pre-load 5mm |
BITUBO 10.5 Pre-load 11mm |
BITUBO 10.5 Pre-load 15mm |
|
1G-0G | 39mm | 33mm | 50mm | 41mm | 22mm |
1G'-OG | 70mm | 68mm | 80mm | 77mm | 63mm |
1G'-1G | 31mm | 35mm | 30mm | 36mm | 40mm |
1G'シート高 | 基準 | STD+28mm | STD+15mm |
スプリング13.5kg/mm、Pre-load 5mmの状態で、レバー比の変化(プログレッシブ比)の見当をつけた。結構プログレッシブに作用するレバー比なので、いたずらにpre-loadを下げすぎると、ヨレヨレになるばかりではなく、一番動いてほしい1G'前後でのスイングアームの動きを阻害してしまう可能性がある。
基準点間距離 (バネ上下) |
SPG長 |
レバー比 | 体感上の バネレート | ||
0G(セット長) | 412mm | 176mm | 50/11 | 2.75 | |
1G | 362mm | 165mm | 30/10 | 4.5kg/mm | |
1G' | 332mm | 155mm |
荒れた路面で初期入力での追従性を考えると、プリロードは0.3G程度までに納めたい。「乗車(1G’)サグはホイールトラベル(実測していないが200mmとのこと)の30%程度に設定」という、モトクロス流のサスセッティングから比較すれば、STDショックの乗車サグは定石どおり。
BITUBOのSPGは13.5kg/mmだが、減衰最弱、Pre-loadが5mmの状態では、乗車サグは80mmとノーマルより柔らかい。取り敢えずこの状態でオン・オフ走り込んでみると、確かにノーマルショックより柔らかく脚が動く。舗装路のバンプでは、ヨレがやや気になるが、コーナー立ち上がりでスロットルを急開しても、ぐっとサスが縮んで、いたずらにケツがでて行かない。ケツがあがって結果的にキャスターが立ったので、気にしていたアンダーステアもむしろ減った感がある。ダートでもフラットな路面を走る限りは、ノーマルショックより遥かにしなやかで追従性がいい。「もう少し奥では柔らかく・・」とも思うのだが、こうなると寧ろフロントの硬さの方が気になってくる。
Preloadを11mmにすると空車SAGはノーマルショックと同等になる。シート高はノーマルより30mmほど高くなるが、1G’付近でサスが大きく移動するので、路面への追従性は良くなる筈である。確かに舗装路を走る限りにおいては、5mmよりはこちらの方が柔らかく感じる。バンプを拾うとホイールが大きく動き納まりが悪い感すらでてくる。未舗装路での突き上げ感や振動は5mmの時と大差ない。
10.5kg/mmのSPGが入ると、これはもう完全にオフ車のサスになった。ガレ場を登ってみたが、車重がある上にホイールトラベルが短すぎて、あっという間にショックが底付きするし、舗装路を責め立てると当然ヨレる。それでもダート走るにはこれくらいの柔らかさは必須だろう。リヤが柔らかくなると、フロントの突き上げばかりが気になってくる。Fフォークのスプリングは固いのは出てるけど、柔らかいのはない。ワンオフするしかないのかなあ・・・。
追記5 エンジンガードをつけてみた(2010年11月)
重くなるのは嫌だけど、転倒時にそのまま走れなくなるようなダメージは避けたい。いわゆるスキッドパッドが付けられるような、エンジンマウントやフレームの構成ではない。アルミパイプでクラッシュバーを自作しようかとも思ったが、採寸やら建てつけやらが面倒くさい。WEBで検索すると、SW-MOTECHなるドイツのメーカー製のクラッシュバーが見つかった。スチール製なので結構重そうだったが、送料を入れても15,000円程度で入手できるので、これを購入することにした。
"Neu im Sortiment sind Sturzpads aus dem Hause SW-MOTECH. Die Sturzpads schützen den Rahmen, Motor und die Verkleidung im Fall eines Sturzes vor schlimmeren Schäden." を、"Brandnew developed from SW-MOTECH are frame sliders. The will protect the frame, engine and fairing in case of drop."なんて英訳しちゃう生粋のドイツ人だが、製品精度もよく、建てつけもバッチリ。”世界中でまともな工業製品を量産できるのはドイツ人と日本人だけ”だと常々思う。
ドイツ人はいい仕事しているのだが、取り付けに入ると、またしてもイタリア人のユーモアに作業を阻まれた。クラッシュバーにブレーキペダルが干渉するので、右のフットレストにカラーを噛ませてマウントごと外側へオフセットするのだが、フットレストのマウントボルトを緩め始めた途端、バッキリ!!。
”バッキリ逝った”のはボルトではなく、フレームに溶接されたナット部分。ベットリ着け回されたネジロック剤のパワーも手伝って、イタリア人の”点々づけ溶接”はインパクトレンチどころか人力にも耐えられなかった。ところでこのナット部分、フレームの裏側に溶接され、その後でフレームが組み上げられる。だから、もげてしまうとどうにもならない。上の画像のように、サンダーでネジの頭を切り落としたのはいいが、再溶接どころか、フレームから取り出すことすらできない。
排ネジ箱の中に転がってた、Z1のエンジンスタッドボルト用の袋ネジ(M10 Pt1.25)を上の画像のように外径14mmほどに手加工。フレームのボルト穴を1mmほど拡大して差し込み、フランジ部分をべったりと溶接。フランジ部分は3mmの厚みがあるが、もともとフットレストをオフセットさせる作業なので問題ない。
モゲたナットとボルトはガッツリ孔を広げない限り取り出せないので、ボルトを短く切断して、フレームの鋼管の中に「エイ」と押し込んだ。カラカラと動かれるのもシャクに障るので、シーラントを大量に流し込んで、動けないようにした。本来1時間足らずで終わるはずのクラッシュバー装着作業は、イタ公のいい加減な溶接のせいで、またしても3時間がかり・・・・。
追記6 660R その後(2012年12月)
WEB更新はサボっていたが、その後もモディファイを重ねて2012年10月現在、上の画像のような状態。ここ数年の間に、新しいXT660系のパーツも多数ラインナップされたので、随分とチューニングも楽になった。"OFF THE ROAD"というドイツの通販ショップを訪ねると、大抵のものは手に入る。自分の車両の2-1エキゾーストやリヤ18インチホイールなども、そのサイトから入手した。
荒れた林道を走るとどうしてもカメになりそうになるので、最低地上高稼ぎにエキゾーストを2-1にした。先に装着していたエンジンガードは重かったし、ウォーターポンプだけ保護できればいいので、アンダーガードに変更した。2-1エキゾーストに交換すると、驚くほど、低中速域でのトルク特性が良くなった。3速や4速でダラダラとコーナーを抜けてゆく時に、いままでクセのように当てていた半クラが不要になった。
タイヤのバリエーションに困るのでリヤホイールは18インチ化。併せてドライブスプロケを15T->14T、ドリブン側を45T->46Tへと変更。まだ10000Km程度の走行なのに、ハブダンパーが経たってガタがでていたので、社外の新品へと交換した。
18インチ化に伴う車高調節のために再度リンクを交換。いままで使っていた「シェルパ」からの流用部品を捨てて、上の画像のものに変更した。
懸案のFフォークスプリングは、ワンオフのためのサンプル出しのために社外スプリング(Hyperpro)に変更。オイルは変えないつもりだったけど、画像の通り酷く汚れていて鉄粉だらけだったので、ストックしてあった#15を間に合わせに入れた(純正は#10相当が指定)。リヤのローダウンに併せて、Fフォークの突き出しもチョイと変更した。